「のんのんびより りぴーと」10話におけるれんちょんの成長と駄菓子屋の葛藤
「のんのんびより りぴーと」10話ではれんちょんが分校のみんなと少し遠くに出かける為、自転車の補助輪を外すという話がある。小学1年生のれんちょんは自転車に乗る練習をするため駄菓子屋を訪ねる。
れんちょんが熱を出したと聞いて速攻で店を閉め宮内家へと向かう駄菓子屋。
そこには分校のみんながれんちょんのお見舞いに来ていた。熱を出したと聞いて、いてもたってもいられずにすぐ宮内家へと向かった駄菓子屋には(れんげには自分がいないとダメだ)という思いが少なからず存在していると考えられる。
しかし、れんちょんはたくさんの友人に囲まれており、駄菓子屋はその光景に驚いたのだろう。自分がいなくても、もうれんげは大丈夫なのではないだろうか。という思いが芽生え始めている。
しかし、何度も読んであげている絵本を読んでと駄々をこねるれんちょんもいる。
その後れんちょんは駄菓子屋に自転車の練習に付き合ってもらう。何度も転び、膝が絆創膏だらけになっても決して弱音を吐くことも、泣きじゃくることもなく練習を続ける。小学一年生という年齢を考えるとすごいことだ。
そしてついにれんちょんは自転車に一人で乗れるようになる。
この二つの描写は二人の関係を表している。ずっとれんちょんを近くで見守っていた駄菓子屋だが、れんちょんが大人になっていくにつれてその必要はなくなる。
駄菓子屋はもうれんちょんの背中を後ろから押す必要はない、後ろから見守ってやることしかできない。れんちょんはこの瞬間からこれからの人生を自分で進んでいけるのだ。さらに日中から夕刻へと時間帯とともに子どもから大人へと進んでいっているという描写にも見える。
陽の光へ進んでいくれんちょんは希望の道へと進んでおり、対して駄菓子屋には陰がかかる。駄菓子屋はれんちょんが成長していることに喜びを感じながらもそれ以上に哀しみを抱いている。
ずっと自分が近くで背中を押してあげなければと思っていた相手は、もうその必要はなく、ただ後ろから見つめているだけでも勝手に人生を歩んでいく。それも陽のほうに進んでいく為、自分が道を正してやる必要もない。自分はもう必要ないのではないか。
ラストに高い棚にあるお菓子に手が届かないれんちょんは駄菓子屋にそれを取ってもらう。この描写をラストに持ってきていることから実際にはれんちょんはまだまだ駄菓子屋に頼らなければならない子どもであり、駄菓子屋もそれを感じている。
一歩一歩確実に大人になってくれんちょんとそれを直に感じ嬉しい反面、哀しさも抱いている駄菓子屋。二人の関係はきっとこれからも変わらずに続いていくだろう。